ぐるぐるする夜に

酔いどれ女の見たり読んだり浸かったり。

スポンサーサイト

--.--.--

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
カテゴリ: スポンサー広告

 

半落ち/横山秀夫

2008.01.26



横山秀夫「半落ち」。映画のほうは昨年末にもTVで放送したようだけど
私が見たのはもっともっと前です。たぶんTVで見たと思うんだけど…。
正直全然内容を覚えていませんでした><
原作がすごい作品らしいという事だけは理解したものの映画を見終わって
では良い作品だったか?人に薦めるか?と聞かれたら
“良かったような気もするけど、そんな言われてる程の作品でもないよ”
としか答えられなかったと思う。


沢山読みたい本がある状態で、ほとんどストーリを覚えてはいないものの
一度は映画で見てる事だし特に読まなくてもいいか…。と思ってもいたのですが
読んでみて本当に良かった!

たったの297頁に心を揺さぶられるラストが待っていた。
映画で見てるなんて勘違いか?と思うほどに原作のほうは
読みがいがあり、印象的な構成になっています。
読んでみるとこの物語に主人公という決まった枠などないのでは
ないかと思える。そこがとても良かった。
主な展開は、元警察官が妻殺しを自首し、それを完落ちではないと
思うものと完落ちに仕立てあげようとする思惑といった感じ。

6章、警察官・検察官・新聞記者・弁護士・裁判官・刑務官の章で成されており、
元警察官の梶が何を隠そうとしているのか、そして梶を死なせは
しないと動く男達の様子が見られる。
梶自身の心模様は本人の口からは語られない。
周りが想像するのみ。
警察や法の組織の中での自分の立場や、事実を明らかにする事よりも社会的は地位を
守るために行われる文書偽造や取引。
ここら辺も梶の空白の二日間と平行してとても面白いのです。

少しネタバレもあるので続きは折りたたみで。
アルツハイマーの妻を嘱託殺人で手にかけてからの空白の二日間。
梶という人の描かれ方が透明で良い人すぎるので
行き先が歌舞伎町らしいと分かっていても読者は、梶の人間性での
ドンデン返しは考えないと思う。勿論私も考えなかったものの
そこまでして隠さなければならない事、誰を守るため?が全然分からなかった。
映画見てるんですけどね。いやかすかに子供が関係してるのだけは
覚えてたんだけど><

そんな訳で、ラストでその謎が解けた時は“あれ?そうだったんだ。本当に
梶にとってだけは守りたい人であって他人からしたら そんな事で
裏取引までさせて偽造するような事だったのか”と思った。

それにやはりまだ他に策はあったのではないか?と悔やまれてならない。
妻と生きる道を諦めないでほしかった。読後はただそれだけです。
梶は妻を手にかけた時、確実に後追い自殺するつもりだったと思う。
子供の思い出を分かちあって生きてきた妻を失くして一人で生きていける
筈がないと思うのだ。
梶をめぐる6人それぞれの男達の家族のエピソードもあり
どうして皆が梶に肩入れしてしまうのかも頷ける。
奇麗事ではないのだ。
特に裁判官の章では、自分の父親がアルツハイマーである。
愛する妻を自ら手にかけてやるしか道がもうないと思った梶の苦悩。
反して、
殺してくれと乞われた事もあったし自分で死んでくれたら良かったのに…と
思いながらも殺せる訳がないと思う藤林の妻。
ここら辺は本当に重くて心苦しいストーリーだった。

守りたい人がいる、と言う事。
あの人が生きていてくれる、ただそれだけが自分を生かす力にもなっている
という事。


娘を先に亡くし、痴呆を進行させた私の祖母の晩年は、自分達孫から見ても
こんな植物状態で生かしておくのはエゴなのか?とも思う事があった。
それでも死なないでほしい、ただ生かされているだけでもそこにいてくれるという事が
どれだけありがたい事だったか思い出しました。

素晴らしい作品でした。
スポンサーサイト

 

上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。