ぐるぐるする夜に

酔いどれ女の見たり読んだり浸かったり。

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夏の庭ーThe friends/湯本香樹実

2009.10.23


小学生の男の子と老人のひと夏の不思議な交流のお話。

自分の子供時代や、大好きだった祖父との毎日を思い出して
じんわりしたり温かい気持ちになったり。
とっても素敵な作品だった。

大人と子供としてではなくそこには対等な友情が芽生えはじめ
お互いツンデレなものだから読んでいて何とも微笑ましい。
最初は子供ならではの少し残酷な動機だったのに、
老人は、子供達との交流を通して生き生きとしてくるし
子供達も色んな事を知り、心も成長していく。

なんて色鮮やかで生命を吹き込まれた作品なんだろうと思いながら読んでいた。
庭のコスモス、みずみずしいスイカ、真夏の白い陽射し、そして花火。
作品では子供達からの目線で語られているが、もしかしたら子供達以上に
老人が彼らから貰ったものは多かったのかもしれない。
そんな事を思った。
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さよなら渓谷/吉田修一

2009.10.23


帯の“人の心に潜む「業」を描き切る。”はさすがに言いすぎなような…。
とは言え、帯キャッチコピーの“どこまでも不幸になるために、
私たちは一緒にいなくちゃいけない。”に惹かれて手に取ったのですが。

フィクションではあるけれど、フィクションでしかありえないお話なのだけど
物語の中で起きる事件が現実にワイドショーで連日取り上げられたものを
彷彿とさせるので、とにかく軽い気持ちで読んでしまい気持ちが
重くなった。

センセーショナルな事件の陰にひそみ、あらわにされていく過去の事件。
私は女なので、読んでいて辛いなんてもんじゃなかった。
実際に世の中には今もこの手の被害でずっと苦しみ続けている方がいる。
究極の恋愛物語という観点で見るよりも、どうしても彼女の茨の人生を
思わずにはいられなかった。

彼女があの偽名を使った訳があまりにも悲しすぎる。
私はこの作品でここの部分が一番良かった。
こうゆう視点を持っていると言うだけで吉田修一は素晴らしいと思う。

戻れない、決して消えない忘れさせてくれない辛い過去を背負い
それでも生きていかねばならないのだとしたら…。

納得のいかない展開もあった。
タイトルだってこの作品に合っているとは思えない。
ラスト数行があまりにも重い。こんな文章で終わらせないでくれ!と
思うほどに重かった。
ただ、現実にはこんな展開絶対ありえない!と思うのに、
この作品の息苦しさの中では頭では理解できない感情も
受け入れてしまえる空気が流れていた。

 

街の灯/北村薫

2009.10.15


円紫さんと私シリーズを読み終えたばかりなので、
正直、また似た構成だなー、と思ったのだが…。

面白いです。読んでいて楽しい。
父親のような視線で遠くから温かく見守っている風だった円紫さんも
良かったけど、このシリーズのそれに当たるベッキーさんの
キャラが格好良いのだ。しかもミステリアスときた。

表題作を含む3つの連作短編集。
時代は昭和初期、主人公の女学生は上流階級のお嬢様。
こうゆうお話、読むの初めてかも。
上品で華やかな空気が全編を通してこの物語を一層美しいものに
していると思う。

チャップリンの映画からきている「街の灯」は読みがいのあるお話だと思う。
ベッキーさんの言葉が厳しくはあるが同時にとても優しい。

このシリーズ、読むのが楽しみです。

 

クレィドゥ・ザ・スカイ/森博嗣

2009.10.12


スカイ・クロラシリーズ、最終巻。

「ナ・バ・テア」の時もしばらく“僕”を勘違いして読んでいた。
それ以来、まず今作の語り部は誰だ?と知りたい気持ちが強くあったように思う。
最終巻ではその欲求がページをめくるごとにあやふやになり、
まるで語り部の見る幻覚のようでさえあった。
はっきりいって分からない。章ごとに語り部は変わっているとさえ思える。
同一人物だったのか?とさえ何度も思った。
だいたい想像をつけて読んではみたけど確信は出来なかった。
(今までの作品を読み返せば何らかのクセから分かるのだろうけど)

現実で何が起きようと最後には空がある事に、空で死ねる事を想像出来たこれまでの巻とは
少し様子が違い、現実の思惑に始終さらされていたのでどうも重い体を
もてあますような感覚が常につきまとっていた。

私は本でしか読んでいないから(押井さんの映画はこれから見るつもり)
それぞれキルドレに似通った雰囲気はあったとしても、個々に気持ちを込めて
読んでいたけど、物語の中の普通の人間からしたらどうなのか、組織の
上のものからしたらキルドレは何人いようが単にキルドレとしての
意味しか持たないのだろう。

 

朝霧/北村薫

2009.10.07


<私>と円紫さんシリーズ第5作目。3つの中篇作品。

「山眠る」
序盤から俳句、古典作品が登場人物達の会話で用いられ相当に苦戦した。
一応、これらがメインのお話に少なからずも繋がるので理解出来るのが
一番なのだけど、私には残念ながら無理だった。
メインのお話は明るいものでは無いが深く切ない余韻が残り、
やっとこのシリーズを読んでいる醍醐味を思い出した。
我が子を思う親の気持ちや、山眠るの句に感じた気持ちの変化。
淋しいけど大きなものに包まれている感じを受けた。

「走り来るもの」
こちらはリドル・ストーリーと言うらしい結末明かさず読者にゆだねる
タイプのお話を用いて語られる作品。
その「女か虎か」自体が面白かった。

「朝霧」
祖父の日記に書かれていた謎と円紫さんの演じる事になった落語の
偶然の巡り合わせがドキドキさせる。
忠臣蔵といろは歌の辺りのくだりはとても興味深く面白かった。
勉強にもなったし祖父の日記から膨らむ淡く繊細な恋の感じも
とても良かった。

全体を通しては高岡正ちゃんとのくだりがやっぱり一番楽しかったかな。
一応この作品でシリーズは終結?
円紫さんとも、ずっと優しく見守られ教えを請う側では無くなったし、
博識すぎる<私>の恋愛は見たくないので、それこそリドル・ストーリーと
して私の中では読み終えた、と言う想いです。

 

パーク・ライフ/吉田修一

2009.10.05


表題の芥川賞受賞作ともう一篇の作品。

良さが分からない事のほうが多い芥川賞作品だけど、
この作品は作者の言わんとしてる事がぼんやりとだが伝わってきて
その感性に驚いた。

多種多様な人の集まる都会の公園、“からだ”と“こころ”。
人間観察力が凄いんだけど、それをそのまま文章にせず
登場人物の感覚にそって遠近感を持たせたり、高低差を出したり。
抽象的な表現がすごくうまい。
この発想はどこから来るのだろう。

ストーリー展開としては主人公の周囲で起きる事柄を浅く広く淡々と
描いていくのでその点は“やっぱり芥川賞って分からない”で終わってしまうかも。
でも、わざと淡々と描いている感じもするのだけど。

人間と公園、そこからこんな小説を書けるなんてスゴイ感覚だと思った。

同時収録の「flowers」は上記とはガラっと変わった作風。
魅惑的な花の存在を人間にかぶせ、かなり濃い感じの作品。
登場人物の肉体を使う系の男達と花の接点が面白い。
こちらの作品のほうがパラッと読んでいる分には分かりやすくて良かったかな。

 

ゆれる/西川美和

2009.10.04


映画は2年半程前に鑑賞済み。
ラストの場面、その後兄はどうしたのか…、観る者にゆだねる形で
終わったそれは数日間なかなか頭を離れなかったのを覚えている。

今回、映画より前に「きのうの神様」を読んでしまうつもりなので
西川美和さんの本も読んでおこうかと思って手に取った。

たぶん映画が先に作られていて、その後ノベライズ化したのかな?と
思う程に、映画の世界からほとんど物語は広げられていないように思った。
語りを、登場人物それぞれの一人称で進ませ、兄の思考を最後のほうまで他者から見た人物像で語らせたりする形式。
別に多視点にしなくても良かったのでは?とも思ったけど、
それは私が映画を見てから時間が経ち過ぎているせいかもしれない。
あと、この作品は私の勝手な思い込みだけど本から入ったとしても
映画の感動を少しも削ぐ事は無かっただろうと思う。

渓谷にかかる不安定な吊橋と静かにたたずむ森の装丁写真は
青みがあり、まるで海に沈んだ場所にあるようにも見える。

兄弟の物語。
人それぞれにこの作品を読んでゾッとしたり、どうしてこんな風になって
しまったのかと嘆いたりするのだろう。
私は兄と二人の兄妹だが、兄が他人に見せる顔は私に見せている物とは全然違うのだと思う。
兄弟は選べないし、どんどん考えていくと親の育て方とかまでいってしまって、しかも考えるだけもう無意味だ。

兄はラスト、バスに○○…ったと私は思っている。そうであってほしい。

 

フラッタ・リンツ・ライフ/森博嗣

2009.10.01


スカイ・クロラシリーズ、随分と間を置きつつも4冊目に辿り着いた。

今作の主人公はクリタだった。
だからこそ、だろうか。あー、やはりこのシリーズはクサナギスイトの物語
なのだなぁ、と改めて感じられたのが不思議だった。
この後、どんな展開になってスカイ・クロラに続くのかは
分からないけど、今作は大きな動きがあったし、クリタを通して
クサナギスイトを魅せると言う方法に出た作者はすごい…。

今作は、文庫本で。
装丁から入った作品でもあるので出来ればハードカバーで読みたかったのだが。
ただ、初めて作家さんによる解説が読めたのは良かった。
自分の言葉では全然あらわせない感動がこのシリーズにはあるから…。
ちなみに「ナ・バ・テア」の文庫解説はよしもとばなならしい。
ちょっと読んでみたい、と思った。

今までのシリーズにも登場しているクリタ。
何となく勝手に人間に近い人なんじゃないかと思っていたけど、
そうゆう風でもなく。
何かがポロッと欠落している風な。

打算のない純粋な想いで締めくくられていて、切なかった。
とても良かったです。

 

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